アレルギー疾患
アレルギー疾患
私たちの体には、異物(例えば細菌やウィルスなど)から体を守るために「免疫」という仕組みが備わっています。たとえばワクチンは、この免疫システムを利用して細菌やウイルス対する防御力を身に着けたり高めたりします。しかし逆に、この免疫の働きが過剰に作動してしまうと、体に害のないもの(食べ物や花粉など)にまで反応してしまいます。この反応を「アレルギー」と呼びます。
アレルギー反応は4パターン(I~IV型)ありますが、一般的な花粉症や食物アレルギー、蜂さされアレルギーなどはI型アレルギーです。I型アレルギーは、別名「即時型アレルギー」とも呼ばれ、アレルゲン(アレルギーをひきおこす成分)が体内に入ってすぐ(長くても2時間以内)に症状があらわれるのが特徴です。アレルギーをお持ちの患者さんでは、それぞれのアレルゲンに対して固有のIgE抗体(「抗原特異的IgE抗体」と呼びます)ができてしまっていて、体に入ってきたアレルゲンとくっついて過剰な免疫反応を引き起こします。抗原特異的IgE抗体は採血で測定が可能で、何に対して反応するのかを知ることができます。当院では、「View39」という39種類のアレルゲンに対する抗原特異的IgE抗体を測定することが可能ですので、お気軽にご相談ください。
アレルギー症状は、軽症のうちは、アレルゲンが体に触れやすい部位(例えば、花粉症であれば花粉のついた眼や鼻、気管支)に主な症状がでます。しかし、重症になると体中に強い反応が引き起こされてしまい、呼吸ができなくなったり血圧が低下したりする「アナフィラキシーショック」という命に関わる事態に発展する場合もあります。
リウマチや膠原病は、免疫システムが正常な体の一部を誤って異物と認識して抗体(「自己抗体」と呼びます)を作ってしまい、II型やIII型のアレルギー反応がおこって、全身や組織に炎症をひきおこす病気です。この反応によって、例えば関節に強い炎症がおこると「関節リウマチ」がひきおこされます。当院では、リウマチや膠原病の早期診断、治療を基幹病院と連携しながら積極的に行っておりますので、お気軽にご相談ください。
春に起こるスギ花粉症が有名ですが、それ以外にもブタクサやヨモギの花粉症は秋(早ければ8月頃から)に発生しますし、ハウスダストによるアレルギー症状は季節によらず一年中発生します。複数のアレルゲンに対して反応することも珍しくなく、例えばスギ花粉症の約70%の人では他の花粉やハウスダストに対するアレルギーを持っているといわれています。当院では、「View39」という39種類のアレルゲンに対する抗原特異的IgE抗体を測定することが可能ですので、お気軽にご相談ください。
また症状だけからではコロナやインフルエンザ感染症と区別することが難しいケースもあります。この場合、感染症の検査が陰性であることを確認した上で、鼻水を特殊な染色液で処理して顕微鏡で観察し、IgEを作り出す本体の血球である「好酸球」がたくさん認められると、診断の助けになります。当院では、顕微鏡も常備しておりますので、こうした検査を行うことも可能です。
治療の原則はマスクや眼鏡などでアレルゲンの侵入を防ぐことですが、それでも症状がでてしまうのは皆様もよく経験される通りです。眼や鼻、皮膚、気管支(喘息)の症状が主体の場合、アレルギーを抑える点眼薬や点鼻薬、軟膏、吸入薬、内服薬を使用します。私自身4月と9月に必ず眼と鼻、皮膚に症状が出るので、少し前から点眼薬と点鼻薬を開始し、じんましんが出始めたらすぐに軟膏を塗り、強めの症状が出るときは内服薬を服用することで、最近はあまり困ることなく済んでいます。点眼薬や点鼻薬は成分によっては心臓に負担をかけたりする場合があります。また、内服薬の中には眠気を強く催すものがあります。罹っている病気によっては避けた方がよいお薬もありますので、お気軽にご相談ください。スギ花粉やダニに対する強いアレルギー症状でお悩みの方には、アレルゲン免疫療法(減感作療法)という選択肢もあります。アレルギーの原因であるアレルゲンを少量から投与することで体をアレルゲンに慣らし、アレルギー症状を和らげる治療法です。長期間(推奨3~5年)の服用が必要な治療ですが、症状の緩和や先述の治療が不要になることもあります。強い症状でお悩みの方や副作用でお薬の継続が難しい方に適していると考えられています。このような方はお気軽にご相談ください。
特定の食べ物によって、唇や口の中の腫れ、のどの違和感(かゆみやいがらっぽい感じと表現されることが多いです)、腹痛、嘔吐、下痢などの症状が現れます。多くの場合、食べてから2時間以内に症状が出現する即時型です。即時型の重症例では、気管支粘膜が腫れることよる呼吸困難・停止や、血圧低下によるショック・心停止に至るケースもあります。私自身、呼吸停止する一歩手前でなんとか救命できた経験もあります。食物アレルギーの原因となる主な食品としては、卵、牛乳、蕎麦、小麦などの他、エビやカニなどの甲殻類、イチジクやマンゴーなどの果物類もよく経験します。
検査の方法としては、血液検査で抗原特異的IgE抗体を測定する方法(View39など)がありますので、お気軽にご相談ください。
食物アレルギーは多くの場合、幼児期・小児期に発生し、年齢とともに改善していくことも珍しくありません。しかし、原因食品や発症年齢などにより経過は異なります。一般的に、卵、牛乳、小麦、大豆アレルギーは改善しやすく、そば、ナッツ類、甲殻類、魚アレルギーは改善しにくいといわれています。
治療は、アレルギーの原因となる食材を避けた食事(除去食療法)が基本となります。アレルギー症状が出現した時は、抗ヒスタミン薬やステロイド薬などの薬物療法が中心となります。
かゆみを伴う湿疹が、良くなったり悪くなったりを慢性的に繰り返す病気です。皮膚は外界と体内を分ける境界線であり、いろいろな物質や乾燥から体の内部を保護するバリア機能があります。このバリア機能が弱まると、外からアレルゲンなどの刺激が入りやすくなります。免疫細胞と結びつくとアレルギー反応がひきおこされ、皮膚に炎症が生じて、アトピー性皮膚炎の発症に至ると考えられています。
診断は、皮膚や湿疹の状況やアトピー性素因の有無を聴取して行います。とにかく皮膚がかゆい状態であることが大前提で、湿疹は、おでこ、目や口や耳の周り、首、手や足の関節の内側部分にあらわれることが多く、左右同じような場所にあらわれることが多いのも特徴です。アトピー性素因とは、本人やご両親が喘息や花粉症などの他のアレルギー疾患にかかったことがあるかということです。
治療は、ステロイド軟膏が治療の柱になりますが、それ以外にも毎日のスキンケア(体をきれいに保つこと、保湿することなど)が重要になります。
免疫とは本来、異物から体を防御するためのシステムですが、正常な自分の体をあたかも異物のように認識し排除しようとして、免疫が暴走することを「自己免疫」と呼びます。自己免疫疾患とは、こうした自己免疫による病気の総称です。自分の体を攻撃するリンパ球(自己反応性リンパ球)や抗体(自己抗体)が、皮膚や筋肉、関節、内臓、血管、脳などを攻撃対象にするので、体中いたるところに炎症が発生し、多彩な症状が出現します。しかし、自己免疫が排除しようとしているのは自分の体なのですから、排除できるわけがありません。そうすると、自己免疫反応はどんどん燃え盛り、症状がだんだん悪化していくことになります。
診断は、症状の経過、身体所見、採血や尿などの検査、を通して総合的に判断します。自己免疫疾患の症状や身体所見はとても多彩で、診断基準に記載されているもの全てが最初から認められることはあまりありません。繰り返し丁寧な問診を行って自己免疫疾患の存在を疑い、検査で自己免疫の存在を証明していくことが診断確定への早道です。
治療は、薬物療法でコントロールできない関節の痛みや変形には手術が検討されますが、多くの場合ステロイド剤や免疫抑制剤、抗体療法などの薬物療法が中心となります。